K-BOSSの会

半僧半俗の姿勢で仏の教えを学ぶ

理想と現実の狭間で。熊の出没ニュースから考える「ありのまま」を受け入れる智慧

連日、ニュースで各地での熊の出没が報じられていますね。

市街地にまで迷い込んでしまった熊の姿を見るたび、「なんとか人間と動物が、互いの領域を守りながら『共生』できないものか」と、胸が痛む方も多いのではないでしょうか。

​しかし、実際に現場で命懸けの対応をされているプロのハンターの方々の声に耳を傾けると、現実はそう甘くはないということに気づかされます。

​「一度人間の食べ物の味を覚え、里に降りることを恐れなくなった熊と共生することは、現実的には不可能に近い」

「誰かが引き金を引かなければ、住民の命が危ない」

​そこにあるのは、安全な場所から語る「理想」を打ち砕く、圧倒的で厳しい「現実」です。ハンターの方々も、決して好き好んで命を奪っているわけではなく、苦渋の決断と重い責任を背負って現場に立っておられます。

​この問題に触れた時、私は仏教の「如実知見(にょじつちけん)」という言葉を思い出しました。

​これは、「物事を、自分の願望や偏見を交えず、ありのままに正しく見つめる」という教えです。

​私たちはつい、自然を「優しくて美しいもの」として擬人化し、コントロールできると錯覚してしまいます。しかし、本当の自然は人間の理屈など通用しない、荒々しく、時に恐ろしいものです。

​「共生できればいいのに」という私たちの感情は尊いものですが、時にそれは「厳しい現実から目を背け、自分の心が痛まないようにしたい」という人間のエゴ(執着)の裏返しかもしれません。

​これは、私たちの日常やビジネスの現場でも同じことが言えるのではないでしょうか。

​「チーム全員が常に仲良く、ストレスなく働けるのが一番だ」

「お客様全員の要望を100%叶えたい」

​リーダーとして、そうした美しい理想を掲げることは大切です。しかし、時に「どうしても相容れない状況」や「誰かが嫌われ役になって厳しい決断を下さなければならない局面」が必ず訪れます。

​その時、理想論だけに逃げ込まず、目の前にある「厳しい現実」を如実知見し、覚悟を持って向き合えるかどうか。

​熊の問題が私たちに突きつけているのは、「人間は自然をコントロールできるという傲慢さを捨て、自然に対する『畏れ』と『境界』を再び取り戻すこと」なのかもしれません。

​自分の力ではどうにもならない圧倒的な現実があることを認め、その上で、今自分にできる最善の役割を果たす。ハンターの方々の重い決断から、そんな「生きる上での覚悟」を教えられた気がします。

​今週も、理想を描きつつも、目の前の現実にしっかりと足をつけて歩んでいきましょう。

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